▼【NPO法人健康を考えるつどいブログ】

認知症になる人ならぬ人 By 豊岡倫郎 氏 2018-12-23 

1、認知症が増えている

今日本に65才以上の人が3500万人いる。そして65才以上の高齢者で認知症の人が460万人、軽度認知症(MCI)が400万人いるという。いかに認知症の人が多いかが解かる。平均寿命が延びるのは結構な話ではあるが。認知症になる人とならない人の違いは何だろうか。

2、認知症の種類

認知症の主なものは、4種類あり、アルツハイマー型が60%を占め、脳血管性が15%、レビー小体型が15%、ピック病が5%占めている。しかし別の報告ではアルツハイマー型が更に増えて68%を占めているという。

3、認知症の症状

どんな原因から発症した認知症でも、中核症状といって、四つの症状が知的機能の低下によって現れる。

★覚える能力が衰える記銘力障害

★覚えたことを忘れる記憶力障害

★簡単な計算ができない計算力障害

★人や場所の見当がつかない見当識障害

上記に付随して起こる症状としては、人によって異なるが、次のようなことがある。

★自覚性の低下で依存心。
★うつ状態。
★意欲の減退。
★不安感や焦燥感など情緒障害。
★暴言や暴力など人格の変化。
★話さない。
★妄想。
★幻覚。
★徘徊。
★食行動異常。
★睡眠障害。

4、三大認知症の原因

最近は検査機器や検査方法が進歩して、どのタイプの認知症か、以前よりもその原因も明らかになりつつある。

★アルツハイマー型認知症が一番多いので、簡単にその発症のメカニズムを説明
すると、50歳前後から脳にβ-アミロイドというタンパク質の蓄積が始まり、
60~65歳ころから神経原線維の変化や神経細胞の脱落が始まり、老人斑という
シミが出来る。
その後「リン酸化タウ」と呼ばれる物質が蓄積し、脳神経の原線維変化と呼ばれる
繊維状の塊が出来て、これが蓄積すると、毒性を発して、凝集することによって、
やがて神経線維が死滅してゆく。
次に70歳ころから、脳の海馬周辺に病変が発生して、軽度認知症(MCI)と診断される
状態になる。
さらに80歳前後から大脳新皮質にも進行して、アルツハイマー病と診断される。

これらを発症する年齢や進行度合いや症状の程度は当然人によって異なるが、
自覚症状がなくてもその始まりから認知症と診断されるまでの期間が20年から
30年と非常に長いことである。

★脳血管性認知症は動脈硬化が進み、脳卒中などで、脳の神経細胞が破壊されること
によって、発症する。

★レビー小体型認知症は大脳皮質などの神経細胞にレビー小体という特殊な物質が
溜まり、細胞が死滅する病気である。

5、三大認知症の症状

1) アルツハイマー型認知症

★初期的症状

・少し前のことを忘れがちになる。

・話の内容につじつまが合わないことが多くなる。

・些細なことに腹を立てるようになる。

・意欲がなくなって、うつ状態になる。

・「お金が盗まれた」など、ありもしない妄想をする。

★特徴的なことは、

同じ話を何度も繰り返す。化粧、料理、買い物をしなくなる。日付、曜日、住所がわからなくなる。食事をしたことをすぐに忘れる。外を徘徊する。

2)脳血管性認知症

★初期的症状

・物忘れが多くなる。

・頭痛や手足のマヒ、しびれを訴えることもある。

・感情の起伏が大きくなる。

★特徴的なことは、

・高血圧、糖尿病、心疾患といった脳の血管に影響を及ぼすような持病がある。
脳卒中を起こした後に発症することが多い。泣きじょうごになったり、
怒りぽくなったりする。夜になると感情の起伏が激しくなり、別人のような行動
を取ることがある。

3) レビー小体型認知症

★初期的症状

・物忘れがひどくなる。

・「壁に虫がはっている」など、実際には存在しないものが見えるようになる。

・表情が乏しくなる。

・風邪薬を飲んだだけで寝込むなど、薬に敏感になる。

★特徴的なことは、

・表情が乏しく、無口になり、前かがみで、腕を振らずに歩くようになる。
薬に敏感になり薬を飲んだ時に、激しい吐き気を催したら、レビー小体型認知症
の疑いが濃い。

6、その他の認知症の種類

★ピック病(前頭側頭型認知症)、アルツハイマー型と脳血管性の混合型、慢性硬膜下
血腫、正常圧水頭症などがある。

7、アルツハイマー型認知症の治療法

★薬物治療法としては、

・神経伝達物質であるアセチルコリンの量が低下するのが発症原因とする説に
基づき、アルツハイマー病の進行を遅らせる薬として、製品化されたのが
「アリセプト」(ドネペジル塩酸塩)である。しかしその効果は進行を遅らせるに
留まる程度で完治は難しいようだ。

・その後治療薬開発の焦点は、如何にしてβ-アミロイドの蓄積を抑制させるか、
あるいはリン酸化タウの凝集を抑えることが出来るかなど、いろいろな観点から、
研究が進められているが、アルツハイマー病を根治させる薬の開発までには至って
いないようだ。

8、認知症の非薬物療法

薬に頼らない非薬物療法も重要な治療法として、認められている。例えば、

・音楽療法では、楽器をたたいたり、歌を歌ったり、好きな歌を聴くなどして、
脳を反応させる。

・回想法では、過去の思いでを蘇らせたり、会話によってたのしさを引出し、
情緒の安定をはかる。

・運動療法では、理学療法士の指導の下に、自立心を養い、体力を付けて、脳を
始めとして、血流を促して、精神的安定を図る。

・美術療法では、絵を描く、造形物を作るなど創作活動によって、五感を刺激して、
認知機能の改善を図る。

・アニマルセラピーでは、生きている動物と接することによって、動物に対する愛着
や優しさを持つことで、情緒を安定させる等いろいろ行われている。

以上、非薬物療法もいろいろある。

9、認知症を防ぐには

どんな病気にも言えることだが、「予防に勝る治療法はなし」という文句を切実に感ずるのがこの認知症の場合である。というのはそもそも何故脳にβ―アミロイドやリン酸化タウが蓄積するのか、明らかにされていないから、予防法の方策が見つからない。

ここでは認知症の予防に効果があると言われていることを列挙すると、

★ボケない生活習慣とは

・バランスの良い食事をする。魚や野菜をよく食べる。少食にする。

・便秘しない。腸内環境を良くし、免疫力を高める。

・体をよく動かす。散歩や運動をする。

・夢中になる趣味がある。知的活動で、脳の血流をよくする。例えば楽器の演奏、
囲碁や将棋、日記をつけるなどする。

・友人がいて、外出したりして、人とおしゃべりする。

・生きがいや夢持ち、前向きな気持ちで生活する。

・ストレスを溜めない。いつまでも悩みを抱えない。

・人を頼りにせず、自分で出来ることは自分でする。

★体に悪い生活習慣とは

・大食する。高脂肪高蛋白の食事。喫煙。飲酒。甘いものを沢山食べる。

・食品添加物の入った加工食品を摂っている。

・便秘や宿便があると、腸内の炎症を起こして、リーキーガットと言って、
ただれた腸粘膜から未消化の異物や毒素が血中に入り、体内のいたるところに
炎症を起こす。

・歯周病があると、口内細菌が全身を巡り、脳細胞にも炎症を起こす。

・趣味などなく、テレビを見て、家に閉じこもっている。

・睡眠不足であると、脳細胞のタンパク質の代謝が不全になる。

・体を動かすことが少ない。運動しない。

・いろんな人達と交流しない。家族から離れて孤独感を持っている。

・いろんなことに興味を示さない。進取の精神に欠けるから、廃用性の法則が働き、
脳細胞が怠けだす。

・生きがいや生涯の目標を持たない。

・いつも何かストレスや悩み事を抱いている。

・姿勢が悪く、体が歪んでいる。

・認知症を促進させるような持病がある、例えば、高血圧、肥満、甲状腺低下症、
動脈硬化、糖尿病など。特に糖尿病の人はそうでない人に比べて4.6倍認知症
になりやすい。

・他の病気の薬を服薬している。

★その他最近話題になっている治療法や予防法を列挙すると、

・水分を充分取る。

・イチョウの葉のエキスを摂る。ドイツでは有名で脳血管性の認知症に効果あり。

・玄米に含まれているフェルラ酸が老人斑の形成を抑える。

・活性酸素やAGE(終末糖化産物)を発生させるような生活習慣を改める。

・ウコンに含まれているクルクミンに抗アミロイド生成作用がある。

・少食や断食による効果はすごい。

即ち、便秘や宿便を解消し、腸内環境を整えることによって、腸の粘膜のただれが修復されると、消化不良の異物や毒素も血中に取り込まれることもなくなり、体内での炎症も収まる。また血中に入った毒素によって脳神経の働きが鈍り、脳の血管を膨張させていたのが解消されて、脳の働きが活性化する。

更に効果的なのは少食や断食によって、体内の全細胞に飢餓感を与えて、細胞の宿便ともいわれるカスや老廃物が清掃される。即ち脳細胞や神経組織に蓄積されていた毒素も自己融解してゆく。

従って便秘や宿便が無くなった後の腸内では少食でも以前より効率よく食べ物が吸収されて、綺麗なサラサラな血液が体内に循環することになる。

・認知症予防に良い食べ物は、玄米少食にし、活性酸素を抑えるビタミンB、E、C
の多い食品、DHAの含まれる青皮の魚、大豆製品、ゴマ、海藻、生野菜ジュース
など。

10、まとめ

1)認知症になりたくない人は、たばこ、酒、甘いもの、大食、高脂肪高たんぱく食、
運動不足、知的活動不足はタブーである。この病気の恐ろしさは30年前後経過
してから発症するから如何に日頃の生活態度が重要かを認識しないといけない。

2)今回あげたような症状が出たら、すぐに専門医に診てもらい、初期の段階で対策を
講じれば、進行を止めたり、治療することもある程度可能な時代になってきて
いる。

3)厚労省の調査では、2025年には700万人の認知症患者が発生すると予想して
いる。こんなに増えては、本人はもとより、それを介護する人も大変である。

4)一番の問題点は厚労省も個人一人一人もこの認知症のことについて、何ひとつ
具体的な予防のための歯止めの行動を起こしていないことである。

おわり

まずはおためし

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