▼【NPO法人健康を考えるつどいブログ】

小腸の不調が万病を招く

2018-6-15  豊岡倫郎氏による月例健康情報

1、今までブラックボックスだった小腸

最近の検査機器の進歩で、今まで観察することが出来なかった小腸の内部を、ダブルバルーン内視鏡とかカプセル内視鏡によって、診断できるようになってきた。そして改めて小腸の健全性の重要さが認識されだした。

2、小腸という消化器官の構造と働き

食べ物は口から食道→胃→十二指腸→小腸(空腸)→小腸(回腸)→大腸→肛門へと消化、吸収されて、最後は排泄されてゆく。

小腸の主な働きは、肝臓から分泌された胆汁や膵臓から分泌された膵液が加えられて、食物の消化分解を進めて、殆どの栄養分はここで吸収される。そして大腸は小腸で吸収しきれなかった食物の残りかすから、水分と少量のビタミンを吸収する。

小腸の長さは約6~8メートルある。それに対し大腸は1.5メートルほどである。小腸の内面は下の図のように絨毛が生えていて、この絨毛を平らにすると、テニスコート一面分の広さになる。食物の栄養分を吸収するために分解しやすくしているためである。

また小腸のヒダは大腸のそれと比べて、細かい折り畳み構造になっていて、このヒダをケルクリングヒダと呼ぶ。この細かいヒタダによって、食べ物と酸をはじめとする消化液がよく混ぜ合わされるような構造になっていて、食べ物の消化をしやすくしている。そして腸壁から分解吸収した栄養分は、血液の流れに乗って、全身のエネルギー源になって働く。

この小腸の働きが思わしくないと、食べたものもうまくエネルギー源となってくれない。

3、いま小腸の[SIBO]シーボーという病気が増えている

別名「小腸内細菌増殖症」と呼ぶが、小腸内で腸内細菌が爆発的に増え過ぎて、病気を招いているというものである。SIBOは大腸にあるべき腸内細菌が小腸に入り込み、小腸に停滞してしまい、本来の居場所である大腸に移動しない時に起こる。善玉菌であれ、悪玉菌であれ、本来あるべきでない不適切な場所、即ち小腸に居ることは、好ましくない事なのである。

このSIBOに罹っている人がいま日本で増えてきているが、まだ日本では医師すらその存在を良く知らない為に、患者が症状を訴えても、誤診してしまうという。

4、SIBOの症状とは

食後の腹部にガスが溜まる膨満感、頑固な下痢や便秘、胸やけ、腹痛、おなら、お腹のゴロゴロした違和感などが起きる。更にそれに留まらずうつ、ニキビ、肌荒れ、ムズムズ足症候群、肥満、疲労感、糖尿病、慢性肝臓病、免疫力の低下、リーキーガット症候群(腸の粘膜がびらんし漏れる腸)、狭心症、心筋梗塞、貧血、ビタミン吸収不良などの原因にもなっているという。

5.腸内細菌の数について

人の腸内にはなんと、100兆個、2000種類の細菌が生息している。その内小腸の1ミリリットルあたりの細菌の数は、10の3乗から10の9乗くらいであるのに対して、大腸では10の12乗位に爆発的に多いのである。

そしてSIBOの患者の小腸では通常の10倍以上に腸内細菌が増えているという。それが上述したような症状をもたらすのである。

6、なぜSIBOを発症するのか

その原因として考えられることは

★小腸の運動力の低下・・・糖尿病、甲状腺障害、膠原病、神経筋疾患、
パーキンソン病などによるもの

★大きなストレス、間食、酒、薬剤

★抗生物質の乱用

★胃薬による胃酸過少、慢性萎縮性胃炎

★免疫力の低下

★炭水化物の消化不良、食べ過ぎ

★重金属が体に蓄積

★急性胃腸炎の後に発生・・・腸のペースメーカー細胞のカハール細胞、
ビンキュリン蛋白が障害を受けるため

★大腸のバウヒン弁(回盲弁)の障害

★胆嚢除去者・・・胆汁不足で殺菌能力低下

7、SIBOと関連する病気

★過敏性腸症候群患者の85%がSIBOと合併している。

★機能性ディスペプシア・・・胃が知覚過敏になっている状態。

★クローン病・・・消化器官に潰瘍やびらん。

★セリアック病・・・小麦に含まれるグルテンというタンパク質が免役系を
狂わして炎症。

8、SIBOの検査方法

ラックロース呼気試験で呼気中の水素とメタン量をチェックすることで小腸の細菌の増殖を判定する。

9、SIBOを予防する対策

我々が摂取する糖質には、小腸から吸収されやすいものと、発酵性で吸収されにくくて、短鎖炭水化物となって、問題を起こすものとがある。FODMAPとは小腸での発酵性に関係する糖質の品名の頭文字から取って付けた名前である。それはガラクトオリゴ糖、フルクタン、ラクトース、フルクトース、ソルビトール、キシリトール、ポリオールなどの成分を多く含んだものは控える。

★低FODMAP(フォドマップ)食を摂る。・・・米、そば、グルテンフリー食品、ナス、大根、ブロッコリー、トマト、ニンジン、白菜、キャベツ、もやし、ほうれん草、かぼちゃ、きゅうり、じゃがいも、しょうが、レタス、マヨネーズ、ウスターソース、酢、豆乳、絹ごしでない豆腐、味噌、バター、バナナ、イチゴ、ブドウ、キウイ、みかん、パイナップル、メロン、紅茶、コーヒー、緑茶、ビール、日本酒、ウイスキー、ハム類、豚肉、牛肉、くるみ、魚介類、卵、カレー粉、ココア、味のり、など。

★高FODMAP(フォドマップ)食を摂らない。・・・小麦粉使用一切(パン、ラーメン、パスタ、うどん、そうめん、ピサ゜など)、豆類一式、らっきょう、ねぎ、たまねぎ、にんにく、ゴボウ、ハチミツ、りんご、フルーツジュース、スイカ、もも、なし、柿、干しブドウ、ワイン、ソーセージ、あずき、きな粉、牛乳、ヨーグルト、プリン、アイスクリーム、ミルクチョコレート、シイタケ、さつまいも、

なお留意すべきことは、上述した食品は全く胃腸に障害のない人には、無関係なお話であるから、従来通りの生活習慣、食生活を続けてもよい。

10、SIBOの治療対策

★上述した低FODMAP(フォドマップ)食を摂る。

★SIBOマッサージをする。「の」の字に大腸をやさしくマッサージする。

★抗生物質を使って小腸の増え過ぎてしまった細菌を殺す。

★腸管運動促進剤を使う。腸を冷やさない。間食をしない。睡眠不足に
ならない。

★小腸の中の細菌を飢えさせるためのエレメンタルダイエットという成分
栄養剤を飲んで、細菌を殺す。

★天然由来の抗菌作用のある成分を摂る。アリシン、ココナッツオイル、
しょうがなど。

★再発を防ぐ。良い腸の状態を維持して再発を防ぐ。酒、カフェイン、
グルテン、高FODMAP(フォドマップ)食、特に果糖、加工食品は避けて
少食にする。

11、まとめ

1)今回の記事は江田 証著「パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べては
いけません」さくら舎発行、および同じく江田 証著「小腸を強くすれば
病気にならない」(株)インプレス発行の本を基にまとめたもので、江田
証氏は自治医科大学大学院医学研究科修了し、現在江田クリニック院長。
胃内視鏡、大腸内視鏡で多くの患者を毎日診察しているカリスマ医師とし
て有名。

2)技術の進歩で小腸の観察が進んで、これまでの常識や推測が崩れようとし
ている。海外の医師の間で、実行されている診断方法や治療法が、日本で
は実行どころか、認知されていないようだ。

3)無知は死を招くという言葉があるが、今回に限らず、良かれと思って実行
していることが、逆に不健康を招いていることは、良く見聞することであ
る。

4)「腸活」という造語があるが、ヨーグルトが体に良い、腸に良いと毎日
飲んでいる人が多い。

また胃腸が悪いからと言って、消化のよさそうな炭水化物の食品ばかり摂っていると、小腸には逆に悪い影響を与えていたことも起きているかもしれない。

5)加齢と共に体の免疫力が落ちてきて、70歳を超えると、若い時の半分に
低下するそうである。この免疫力の60%は腸が発揮しているから、元気
な老後を過ごすために、今一度胃腸を痛めつけることが無いよう心がけた
いものである。

6)小腸の長さは6~8メートルもある。お腹のわずかの空間にくねくねと曲
がりくねって、収まっている。生命維持に必要だからこんなに長いのに
違いない。食欲の亡者となって暴飲暴食をして、量的にも、質的にも、
小腸を痛め続けていると、そのうち疲弊して、長寿どころか、取り返しの
つかないことになるだろう。腹も身の内、感謝の気持ちを持って、労わろ
うではないか。

おわり

まずはおためし

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