狭心症になってからでは遅すぎる
1.長寿の人はみな血管が若々しい事実
「人は血管と共に老いる」という言葉が有る。百歳以上の百寿者が亡くなられた後の血管を調べると、皆若々しい血管であるという調査報告が有る。生活様式の多様化と共に、健康に気を配っている人とそうでない人の差が血管に如実に表れて、寿命を左右している。それにしても最近私の身の回りの人達で、狭心症になって、ステント(後述)を心臓の冠動脈に挿入したという人が後を絶たない。何故こんな人が増えてきたのだろうか。
2.心臓の血流
心臓は主に心筋という筋肉でできていて、心筋が収縮と拡張を繰り返すことで、全身に血液を循環させている。心臓の内部は四つの部屋に分かれていて、具体的には全身に血液を送り出す左心室、肺に血液を送り出す右心室、全身から戻ってきた血液が入る右心房、肺から戻ってきた血液が入る左心房がある。
心臓はひと時も休まず、一日に約10万回も拍動していて、一分間に約5リットルもの血液を送り出している。この心臓を動かす筋肉即ち心筋に血液を供給している血管が冠動脈と呼ばれている。この冠動脈が加齢や悪い生活習慣によって、動脈硬化が進むと、血管の内腔が狭くなり、血流が悪くなって、心筋が虚血状態を起こす。これを心筋虚血と呼んでいる。
心筋虚血の状態になると、心臓の拡張。収縮を繰り返す運動も正常に働かず、心臓の働きを支配している自律神経も異常を起こし、脈搏が乱れて不整脈が起きたり、心筋虚血の状態が長く続くと、冠動脈の内腔の狭くなったところに、血栓が出来て、血管が詰まりやすくなる。こうして一時的に血管が詰まることで、狭心症が起きる。そして血管が完全に詰まると、その先に血液が流れなくなり、心筋は酸素不足に陥って、壊死してしまう。これが命に係わる心筋梗塞である。壊死してしまった心筋は元に戻らない。
3.狭心症の種類
ひと口に狭心症と云っても、原因や症状の違いによって、いくつかのタイプが有る。
★労作(ろうさ)性狭心症と安静時狭心症・・・症状の違いによって分類
労作性とは体を動かしたときという意味で、いつもより激しく動いた時に発作が起きるのか特徴である。体を動かすと、筋肉に酸素を送る必要性から、心臓は活発に動こうするが、冠動脈が動脈硬化になっている為、血管の内部が細くなっていて、血流が悪く、酸素不足で心臓に負担がかかり、胸痛などの発作が起きる。
一方安静時狭心症は冠動脈が急に痙攣することで起こる。冠動脈が痙攣すると、一時的に血管が狭まって血流が滞り、心筋に酸素が届かなくなって、胸痛等が起こる。睡眠中の夜中や早朝など、体をほとんど動かしていない時にも発作がよく起こるため、安静時狭心症と呼ぶ。
安静時狭心症の場合、高脂血症、糖尿病、高血圧など動脈硬化を進行させる病気を持つ患者に多い事から、間接的に動脈硬化と何らかの係わりが有ると見られている。
★不安定性狭心症と安定性狭心症…危険性で分類
不安定性狭心症は血液中の余分なコレステロールが冠動脈の内壁に入り込んで溜まり、まるで泥のように柔らかいプラークを形成し、徐々に血管の内側が狭くなってゆく。プラークの表面は、破れやすく、破れると、それを修復するために血小板が集まって、血栓が作られ、血管の内部が狭くなっていて、血流の流れが途絶える事が、いつ起きてもおかしくない状態にある。
これに対し安定性狭心症は、硬いプラークの盛り上が出来ても、表面がしっかり破れにくく覆われていたり、発作の周期が安定しているものをいう。心筋梗塞に移行する危険性はあまり高くはないが、動脈硬化をさらに悪化させない対策は当然必要不可欠である。
4.狭心症の症状
まず心臓の筋肉が血流不足により酸素不足に陥るため、胸から背中、肩にかけて、痛みや胸の圧迫感、息切れ、呼吸困難などの症状が出る。これらは急に寒い場所に行ったり、重い物を持ち上げたり、興奮したりした時に出やすい。ただこれらの症状は数分から10分前後で収まるのが特徴である。これに対して、心筋梗塞の場合は、胸の痛みははるかに強烈で、その場にうずくまったり、失神するほどで、数十分から数時間続く。
狭心症の症状といえども、発作の回数が増えたり、軽い動作でも起こるようになったら、心筋梗塞の前触れであるから、重症化している可能性大で、直ぐ病院へ行くことが望ましい。心筋梗塞になる人の半数は過去に狭心症を発症しているというから、軽視してはならない。
以上の様な症状は外の病気の時にも、発症するから病院で精密検査を受けないといけない。例えば、心膜炎、不整脈、大動脈解離、肺梗塞、肋骨骨折、肋間神経痛、胃潰瘍、胆のう炎、膵炎など色々ある。
5.狭心症の原因
冠動脈狭窄の主な原因には糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、動脈硬化、喫煙がある。では全身に動脈が沢山あるのに、何故心臓周辺の冠動脈に病変を起こしやすいのかといえば、心臓が収縮と拡張を繰り返して、血流が増減していると、そこに一酸化窒素が発生する事と血管が多く枝分かれしていて、弯曲するためである。下の図参照。図の左前下行枝、ついで右冠状動脈、左冠状動脈の順で起こりやすい。また冠状動脈の起始部分ほど重症になり易い。糖尿病から併発したものは細い動脈にも病変が起きていて、治療も難しくなる。
6.主な検査方法
★心電図、運動負荷心電図、ホルタ―心
電図(24時間携帯し記録)
★運動負荷心筋シンチグラム(同位元素
で血流チェック)
★心臓カテーテル検査(冠動脈造影)
7.治療方法その1
★薬物療法には、血流をサラサラにする抗血小板薬、心臓の仕事量を減らすベータ遮断薬、心臓の負担を減らして、血管を拡張する硝酸薬、血管を広げ、血圧を下げるカルシュウム拮抗薬、発作時に一時的に冠動脈を広げるニトログリセリン舌下錠等が有る。当然危険因子である糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、動脈硬化などの治療も並行して行う。
★経皮的冠動脈形成術には
- バルーン(風船)治療・・・細いカテーテルを冠状動脈に挿入し、狭窄部分を風船付きのカテーテルで膨らませ、広げる。
- 溶解治療・・・カテーテルの先端から薬剤を注入して、血栓を溶かす。
- ステント治療・・・再び狭くなるのを防ぐために、カテーテルと共にステントを入れて、狭窄部で広げて、留置する。ステントとは金属でできた網状の筒のことである。
近年薬剤溶出ステントが使用されだした。薬剤溶出ステントからは、暫くの間、細胞増殖抑制剤がしみ出て動脈硬化の進行を抑えるもので、しかもステントが金属製ではなく、溶けてなくなる生体吸収性ステントも使われだした。
ただしステントを留置した部位が再び狭窄してくるときは、またカテーテル治療が必要である。また別の部位にも次から次と狭窄が発生するようになるから、早く根本対策が必要。
- 方向性冠動脈アテローム切除術、高速回転式アテローム切除術・・・閉塞部のプラークを削り取る。硬く石灰化した病変に有効。
なおプラークとは中型動脈の内膜に発生しやすい斑状肥厚性病変という意味である。
アテロームとはプラークが出来ている状態をいう。
★冠動脈バイパス手術とは
一般的に狭窄部位が前下行枝、回旋枝、主要
冠状動脈の
三本ともに起きているときは、この治療が行われる。右の図参照。方法は全身麻酔で開胸し、狭くなった血管の先に他の部位の血管を繋いで、バイパスを作る。胸の動脈や足の静脈などが使われる。以上のいずれの治療法を採用するかは、専門の医者が総合的に判断して決めることになる。
8.治療方法その2
狭心症の最大の原因が間違った生活習慣によって発生した動脈硬化にある。この章では前述した現代医学とは別に、薬も手術もしない無薬無刀治療法にどんなものが有るか説明する。これがイコール動脈硬化の予防法にも繋がるのである。
脂肪分の多い食品を摂取すれば、血液の中にコレステロールが増えることは、今では誰でも承
知しているはずである。また炭水化物と云えども体内に過剰に摂取すれば脂肪に変化して体内に
蓄積される。
1)半日断食メニュー ステージ1
★朝食・・・青汁(生野菜ジュース)180cc、生水と柿の葉茶500ccだけとする。
★昼食・・・食事の量は従来の8割とするが、食事の内容は問わない。
★夕食・・・食事の内容は問わない。ただし腹八分目とする。
水分は生水と柿の葉茶を一日に1.5リットル摂取する。但し食事中と食後3時間は飲まない。
但し嗜好品の酒、たばこ、甘いものは極力控える。間食しない。この水分補給と嗜好品と間食の制限は以下のステージ2や3の場合も同様に守ってほしい。
2) 半日断食メニュー ステージ2
★朝食・・・朝食を抜く。生水と柿の葉茶500ccだけとする。
★昼食・・・食事の量は従来の8割とする。主食は出来れば3分づきの玄米とする。
おかずは野菜、豆類、イモ類、海藻、小魚を中心とする。
★夕食・・・食事の量は腹八分目にする。主食は出来れば3分づきの玄米とする。
おかずは野菜、豆類、イモ類、海藻、小魚を中心とする。
3) 半日断食メニュー ステージ3
★朝食・・・朝食を抜く。生水と柿の葉茶500ccだけとする。
青汁(生野菜ジュース)180cc、
★昼食・・・3分づきの玄米ご飯茶碗一杯、豆腐半丁、ゴマとコンブ粉少々
★夕食・・・青汁(生野菜ジュース)180cc、
3分づきの玄米ご飯茶碗一杯、豆腐半丁、
おかずは野菜、豆類、海藻、小魚類から1品、リンゴ小1個
- 青汁の作り方
5種類以上の生野菜(小松菜、ホーレンソウ、ニンジン、大根、白菜、パセリなど)をミキサーにかけて作る。リンゴやハチミツ少々加え飲みやすくしても良い。根と葉を半々に入れる。
4)この半日断食の特徴
★この半日断食の療法は、今まで3万人以上の人に断食療法を実行して、実績をあげた故甲田
光雄博士著「奇跡が起こる半日断食」マキノ出版から引用したものである。今迄食事療法や断食に関心がなかった方でも、一度は読んでもらいたい本である。何故なら現代医学の薬と手術中心の治療法というのは、自動車の運転免許に例えるならば、限定付き免許であることが解ると思う。即ち治療法の限界が有るのである。又間違った食事によって発症したのならば、食事を正すことが王道である筈なのに、それに気づかない事には、前進はない。
★今まで朝昼晩と3食を過食してきた動脈硬化の人には、直ぐ半日断食を開始すると、色々反動が出るので、徐々にステージ1から時間をかけてステージ3に持って行く方法がよい。
★この半日断食には、現代医学では無視され続けている医学理論が有るが、それが効を奏することに注目してほしい。それは「自己融解」理論と「心臓タンク」説である。
- 自己融解とは、体は外部からの栄養分を絶たれると、体内に不要となっている部分の栄養分をエネルギーに変えて、利用する仕組みが有る。従って断食中は血管の中のアテロームがどんどん使われて、消失して、狭窄が解消するわけである。
- 心臓タンク説とは、体内の血液の循環は心臓の収縮による押し出すポンプの力によって、循環しているのではなく、毛細血管の吸引力が原動力であり、心臓は血液の流量を調節しているタンクに過ぎないという説である。
断食をすると、体内の各細胞が飢える為に、栄養を吸収しようとして、血液を吸引する力が増して、心臓に負担をかけずに、血液循環が良くなる。その為には体内の血管の99%を占める毛細血管が硬化したり、消失しないように、西式健康法の毛管運動をして毛細血管を鍛えることと、生野菜ジュースを飲んで、血管の細胞の活性化を促すことが必要なのである。
こんなことしたって、狭心症が治るわけがないよと、うそぶく人は、一度前述した「奇跡が起こる半日断食」の100ページの動脈硬化の項目を読まれるとよいのでは。
9.まとめ
1)死亡原因の一位はガンで、二位と三位の心疾患と脳疾患は共に動脈硬化が主因となっている。
如何に高脂肪、高タンパクの欧米食が危険因子であるにも拘らず、まだこれらの過食と酒、タ
バコ、お菓子を止められない人が何と多い事か。因みにアメリカの国の死亡原因の第一位は心
臓病である。残念ながら日本もアメリカの病状に追随してきた。しかし改善の兆しはない。
2)狭心症の発作が起きて、まさか私がと云う人が多い。その兆しは糖尿病、高脂血症、高血圧等であるから、健康診断で注意を受けている筈である。甘く見てはいけない。現代医学では応急処置はしても、根治できない、本人は生活態度も改めない、これでは人生プランもオジャン。
3)今小中学生なのに動脈硬化になっている子の増加に警告が発せられいる。子供達の健康管理は親達が指導しないと、将来はない。肉や卵、牛乳、砂糖は血管には大敵なのに。
おわり