1.ヒートショックプロテイン(HSP)とは
日本語に直訳すれば、熱ショックタンパク質のことである。英単語の頭文字を取ってHSPと呼んでいる。体内には色々なタンパク質があるが、このHSPとは誰でも持っている細胞内のある種のタンパク質に熱ストレスを加えると、タンパク質の性質が変わり、体に有用な働きをするタンパク質が更に増加する。これをHSPと呼び、健康増進に役立てることが出来る。
2.タンパク質の説明
HSPのことを説明する前に、体にあるタンパク質について説明する。体を構成している成分の約70%は水分で、次に多いのがタンパク質で、18%ある。筋肉も、骨も、皮膚も、爪も、臓器もタンパク質で出来ていて、生命維持に重要な働きをしている。
タンパク質は20種類のアミノ酸がいろいろ鎖のように、複雑に、立体的に組み合わされ、構成されていて、その種類は体内に4万種類ほどあると言われている。その20種類のアミノ酸の内、9種類は必須アミノ酸と言われていて、体外から食事として摂り入れなければならない。残りのアミノ酸は体内で合成されることが出来る。また二つ以上のアミノ酸が結合したものをペプチドと呼び、50以上の集合体をタンパク質と呼んでいる。なお一日のタンパク質の摂取量は男性で60g、女性は50g必要という。
3.ヒートショックプロテイン(HSP)の発見
1962年にイタリアの遺伝学者リトッサ氏は飼育用のショウジョウバエを高温で飼育すると、遺伝子の一部が活性化することを発見した。そしてさらに研究が進み、1970年半ばに熱ショックによって、増加される特異的な蛋白質をヒートショックプロテイン(HSP)と呼ぶようになった。
4.ヒートショックプロテイン(HSP)の特性
前述したように体内のあらゆる細胞の中にある一部のタンパク質に熱ショックを加えると、その蛋白質の性質が変わり、増加して、いろいろ有用な働きをすることが判明した。その働きとは、
- HSPは細胞の中の一部のタンパク質が熱、病原菌、紫外線、圧力、低酸素、飢餓、精神、放射線、酸とアルカリ、アルコール、薬剤、精神などのストレスによって受けたダメージを修復してくれる。と同時にこれらストレスによって、増加もする。
- 修復できないタンパク質は分解したり、死なせたりして、細胞を元気に生き残させる。
- 細菌やウイルスに立ち向かう免疫細胞を活性化させて、免疫力を高める。
- タンパク質の合成、誕生から分解、終焉までの工程が正常に終えるようにサポートしてくれる。
- 人は誰でも細胞内にHSPを持っていて、自分で増やして、健康増進に役立たせる事が出来る。
5.HSPの研究発展
世界中でHSPの研究が進み、様々な性質、分子量、作用、増加法、遺伝子まで明らかになり、基礎研究から、臨床研究まで進んできて、病気治療や健康法として役立っている。
HSPと言っても分子量によって100種類位あって、大きく分けて8種類、その中でもHSP70という種類が熱ストレスで最も利用効果があるとされていて、以下その健康法を紹介する。
6.伊藤要子博士の加温健康法
伊藤要子博士は修文大学の健康栄養学部教授で何十年もこのHSPの研究、臨床も経験して、最近はNHKその他のテレビにも出演してHSPの加熱健康法を推奨している。関心のある方は著書の「ヒートショツクプロテイン加温健康法」参照。
その方法とは、各家庭にあるお風呂に入浴して実行する方法。
1)湯温40度の場合は20分、41度なら15分、42度なら10分浸かる。
2)入浴後は体を拭いて、保温性の良い着衣を、靴下もはいて、保温する。暑いからと、急激に体を冷やさない。
3)狙いはこの入浴によって、体温を38度まで上げることによって、HSPを増加させる。
4) HSPの増加効果が発現するのは、2日後にピークを迎えるから、この方法は1週間に2回だけ実行する。
5)体力のない人や老人、高血圧、心臓疾患などの持病のある人は、絶対無理をしない事。40度から初めて、胸まで浸かって、
少しずつ時間を延ばして行くと良い。
6)汗をかくので、入浴の前後に水分を補給する。汗と一緒に塩分やビタミンCを失うので、補給することが必要となる。
塩分は食事で、ビタミンCは飲み物として柿茶がよい。但し入浴前に大量の水分補給は血管を圧迫して血圧が上がるので、気を付ける。
7.HSPを増やす入浴法の効果
- 低体温が治る。
- 代謝がよくなる。
- 疲労を解消する。
- 元気が出て来る。
- 運動能力が向上する。
- 免疫細胞活性化し、病気に罹りにくくなる。
- 老化が予防できる。
- お肌がきれいになる。
- ダイエットしやすくなる。
- 鎮痛効果がある。
8.光線療法とHSP
光線療法では温度複写の原理を応用して、近赤外線の波長域の輻射線からの輻射熱によって、体内の深部まで温める加熱作用を利用してHSPを増やすことが出来る。
具体的には専用のカーボン2本を燃焼させて、発生した光線を体に照射させる光線治療器がある。家庭用アーク光線治療器として、利用している人も多い。入浴加熱療法にしろ、光線療法にしろ、誰でも家庭で、容易に実行することが出来るのが特徴である。しかも副作用が一切ない。
9.まとめ
1)昔から日本には温泉の湯治場があって、入浴が病気の治療法のひとつとして、利用してきた歴史があるが、HSPは入浴の回数、
時間、温度を科学的に定めてあり、ただ無暗に入浴回数を多くすればもっと効果があると思って、回数を増やしてはいけない。
2)この加温療法にしても光線療法にしても、全国各地の開業医や整体院などで実行されている。
3)中国の孔子の言葉に、「学んで思わざれば即ち罔(く)らし、思うて学ばざれば即ち殆(あやう)し」と。何事も思い立ったら、
ここ一番の行動力が大切であるということ。
おわり